Wの悲喜劇

今回は何ともアイロニーを含めた静の心理サスペンス。
今回のドラマの主人公野村宏伸が犯す、太った妻を便器に臀部を挟ませ身動きがとれぬようにして餓死させるという全盛の頃のドリフターズも考え付かない事件を、水谷豊の右京さんと寺脇康文の薫ちゃんが解決するのだが、トイレに臀部を挟ませて餓死させる、ひとつ間違えばこれ以上キモイことはないドラマになりそうなモチーフを、舞台仕立ての演出で、右京さんの品位を一層際立たせていて面白く観た。犯人の野村宏伸の存在感もこのドラマを成功させている要因と思う。筋立ても意外性と深みがありよかった。(これは明かさない方がいいと思うのだけど・・・誰がみたってダンディでかっこいい夫の浮気を考えるのに、実はデブの大食い女の妻の方であったのだ)


また、この事件の舞台が、薫ちゃんと妻(鈴木砂羽)の住むマンションで隣家となっていること、鈴木砂羽さんが創作料理好きでしかも妙なるエッセンスを使った複雑怪奇の料理人であり、彼女の料理の味が、犯人の性格の特性を顕していくことになるなど、絶妙な場面設定が生きていて一時間があっという間であった。薫ちゃんの晩餐にいつもの課長も招かれ、事件の日に近くで、薫ちゃんの対抗刑事三人組と鑑識さんがマージャンをしていて役者は揃うなどもおかしかった。

というわけで、「やっぱり相棒は面白いなあ!」


ただ私ごとで恐縮ですが、トイレの場面は正視に堪えない心境がありました。というのは、忘れもしない1999年9月23日になった真夜中の2時、夫がトイレの便器に座ったまま脳内出血で倒れ、救急隊三人がかりで意識のない夫を便器から引っ張り出した経緯があるのです。そのことを思い出し、気持ち的にはちょっと・・・であった、というわけです。