梨の季節到来

お気に入りの梨園がある。毎年梨の季節になるとそこへ行き、贈答用ではなく、家庭用にビニール袋で売っている梨を買う。認知症になってから夫は果物やアイスクリームが好きになったのだ。アイスクリームは、この前の検診で主治医の先生から、「ご主人は冷たいものは食べない方がいいね」と言われて夫自身が欲しがらなくなったので、もっぱら果物をデザートやおやつにしているのだが、スーパーで買ったものは、「まずい」と言って食べないことがある。
そこで、梨が販売されるようになるのを今日か明日か、と待っていたのだ。
そしてついに、今日、お気に入りの梨園のお宅の前をわざわざ通りかかったら、梨の幟が立ち並んでいて、梨販売が始まったとわかった。すぐに入って行くと、顔見知りの梨園のご主人とおばあちゃんがいらして、「やあ、やあ」。
「千円分でいいんですが」と言うと、「おまけだよ」と二千円分ぐらい袋に入れて下さった。
いそいそと帰ると、裏手のお宅の奥さんがいらしたので、梨を差し上げる。このお宅からはよくとり立てのお野菜をいただく。私の方のお返しは、こうしたささやかなものである。


梨は朝摘んだものだから新鮮で瑞々しく美味しかった。夫は最近は摩り下ろしたものしか食べられないので、摩り下ろしてスプーンで食べる。満足そうな表情に私も満足である。